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桝田省治さんによる戦闘計算式初級講座

以前から、「プログラマやグラフィッカーのノウハウに比べ、ゲームデザイナー/プランナーのノウハウは、圧倒的に流れている情報が少ない」と感じています。原因としては、すでにリリース済みのタイトルであっても、その内部仕様の権利は発売元や開発元(つまり会社)に依存するので、容易に公開することができない、という部分があります(守秘義務ってやつですね)。

たまにあったとしても、大元のコンセプトデザインの話であったり、観念的な話であったりして、現場で即役に立つローレベル・超具体的ノウハウというのは極めて限られているのが実情です。

とは言え、「無い無い」と嘆いていても仕方がないので、自分で書いていく事にしました。
正直「俺なんかが…」という部分もあり、先ほどの守秘義務に抵触しないように何か書く、というのは意外と難しく、ちょっと途方に暮れそうになったのですが、ふと思い出しました。

もう2年半も前のことになりますが、「俺の屍を越えてゆけ」等で著名な桝田省治さんが、Twitterで「戦闘計算式初級講座」を呟いていたことがあったのです。

大変参考になったTogetter
http://togetter.com/li/15113

これを読むだけでも十分ためになるんですが、個人的に読み返しやすいようにまとめ直してみました。
「最初から他人の褌かよ!」という感じですが、まあ…試運転ということで…。


▼計算式の組み方

・適切なバランス取り
  ゲーム内の戦闘におけるプレイヤーの緊張感の維持
    いくつかのミスや不運が重なれば「死ぬ」というリスクを感じること
     ・何発殴れば敵を倒せるか
     ・敵に何発殴られればやられるか
  ※ボス戦では当然変わる
  ※マップの広さや体力の回復手段によっても変わる
  ※想定するターゲットによっても変わる

・ごくオーソドックスなRPGの標準的なバランスをイメージ
  ・4対4あたりの集団戦が普通
  ・雑魚戦なら2発か3発殴れば敵を倒せる
  ・1戦闘で平均2発殴られ、それを回復せず放置すれば5戦闘(10発)で死ぬ。
   =1発殴られると最大体力の1/10が削られる。
     N発で死ぬなら、1発あたり1/Nのダメージを受ける。

・話をわかりやすくするために
battle_table.png
 とする。

・攻撃力100 - A × 守備力100。
  A = N発で死ぬ補正値 = 1 - (1/N)

    Nの値の例
      味方→雑魚敵:2.5(2発か3発で敵は死ぬ)
      雑魚敵→味方:10(1戦闘2発くらっても5戦闘保つ)
      味方→ボス: 20(回復魔法を使うボスなら16など)
      強力なボス→味方: 3

・「攻撃力<A×守備力」のとき、「攻撃力-A×守備力」ではダメージが出ない。
 そういうときのためによくやるのは、
  (攻撃力-A×守備力)+p
  pの値は、
   ・DQなら0~4あたり
   ・いわゆる桝田ゲーなら攻撃力/64~攻撃力/32とか

・パラメータの最大値は999、レベル50、全パラメータが600でラスボスに勝てる。
 ゲームスタート時は全部100。
  ※目安を立てるため単純にしている。

・1レベルでパラメータ10上昇?
  →攻撃力や守備力はその半分程度が武器防具に依存する
    →1レベルあたり5前後が妥当。
 なので、例:20レベルなら体力は300、攻撃力も300(腕力200+剣100)

・20レベルの主人公がそれなりの緊張感を維持しつつ戦う適正な敵は、体力、攻撃力、守備力がすべて300。
  ※こういう管理にしておけば、常に体力、攻撃力、守備力が同じ数値になり、
   先の「攻撃力-A×守備力」が、そのまま使用できる。

これで各レベルの主人公の強さ、各レベルの敵の標準的な強さ、各レベルの主人公の標準的な装備の値が大まかに決まった。
これらはここで固定してしまう。どうせ強さは相対で決まる。
何かを最初に固定して基準にしないと先に進まない。

・仲間キャラや敵の個性づけ
  ・魔法使いなら体力が主人公の2割引
  ・戦士なら攻撃力は1割増
    →「攻撃力100-A×守備力100」に放り込んでシミュレート。
      →イメージに合う数値Bを見つけら、「B:100」の比でもって、
       各レベルの魔法使いや戦士のパラメータを割り出す
        →そこから武器防具の数値を決める。

・敵のパラメータ
  ・妙に硬い奴
  ・体力は少ないが攻撃力が高いヤツ
    →「攻撃力100-A×守備力100」に適当な数値を放り込んで、イメージに合う数値を見つける。
    →その比を汎用化して各レベルの曲者を同じ手順で作る。


私がRPGを作った時も、色々と分析や試行錯誤の結果、同じような式と手法になりました。