10/21(日) 、「ゲーム・開発・UXD情報交換会」に行ってきました。
http://kokucheese.com/event/index/55576/
NAVERまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2135083108152832201?utm_medium=twitter&utm_source=twitterfeed
ゲーム開発者・ソフトウェア開発エンジニア・UX(ユーザーエクスペリエンス)研究者が集って情報交換しようという会。
15分単位の短めの発表・ダイアログ(4~5人グループでの対話)・ビアバッシュという構成。
冒頭「ブログに書くまでが勉強会」というお話があり、「自分なりに解釈してアウトプットして、他人と共有可能な状態にしないと勉強会を受けた意義が薄くなる」という意味だと解釈しました。
私は勉強会ちょいちょい出る方ですが、確かにまとめるのは面倒がってあまりできてませんでした。
今回はきちんとまとめようと思います。
会の趣旨や参加コミュニティの紹介は上記リンクに詳しいので割愛。
各発表を見ての個人的にポイントだと思った部分と所感(青文字)をつらつらと。
■コミュニティ・団体紹介
▼hcdvalue
http://www.slideshare.net/hcdvalue/hcdvalue-14642843
・学術研究が現場に活かせていない
強く同意。今回のような会がもっと開かれると良いのでしょうね。
・HCD=人間中心デザイン(Human Centered Design) 。
・UXD= User eXprerience Dsign だが、これだと「ユーザー体験をデザインする」という感じがする。
「Design for UX」という表現の方が良いのでは?
ゲームデザインにおいても、「ユーザーの感情を誘導する・操作する」
という主張をたまに見るけど、健全でない感じがします。
強制的ではなく、自然に感情が動くようなデザインを心がけたいところ。
・デザインする際には、ヒト(&UX)・UI・モノやサービスを取り巻くContext(どういう環境で使うか)も大事。
確かにターゲットが「どういうユーザーか?(年齢・性別・嗜好)」が意識されることが多いけど、
とりまく環境(プレイ時間・ユーザーの立場・生活スタイル)などの考慮は見落とされがち。
考慮ポイントをあらかじめポイントとしてまとめておくのも良さそう。
▼DevLOVE
https://speakerdeck.com/u/papanda/p/devlove-in-a-nutshell
・自分の仕事を憎むには人生はあまりにも短い
・自分たちのことは自分たちでやるしかない
・一生涯ソフトウェア開発 たかだか300人月
状況を変えるためには動くしか無い。
自ら帆を張った方々の行動力は素晴らしいと思います。
▼IGDA日本
・南米にもIGDAの支部がいくつかできた。最近勢いがある
・アフリカにも1つ支部ができた
この前のGCSで新清士さんが東南アジアのゲーム市場の盛り上がりについて公演されていましたが
(https://sites.google.com/site/gamecomsummit/session#session03_2001)
南米、アフリカも盛り上がってきている様子。
今まで東アジア・北米・欧州が話題の中心になってきましたが、今後は中東なども含め、
全世界の動向にも注目ですね。
■発表
▼hcdvalue発表
▽「ヒューマンインタフェースな学会に参加してみた」(ちゃちゃきさん @chachaki)
http://www.slideshare.net/hcdvalue/ss-14820829
・UXには4つの期間がある(利用前/利用中/利用後/利用時間全体)
「プレイしていない時間も、そのゲームの事を考えているようなら、それは良いゲーム」
と言われたりしますね。
どうやって攻略しようかな…どんなキャラにしようかな…名前は…カスタマイズは…
などと考える余地があるゲームは、継続率が高くて長くプレイしてもらえる可能性が高い、
というのは経験則として知っていたけど、それが明文化された感じ。
後できちんと追ってみたいです。
▽「APCHI2012にて、アイデアを伝える」(白澤さん @shirasy)
http://www.slideshare.net/shirasy/20121021hcdvalueshirasy
・APCHI = Asia Pacific Conference on Computer Human Interaction
・ゲームをあつかったセッションも
・ペーパーホワイトボードワイヤフレーミング
・ノートに書いて説明すると、口頭よりも共有効率高い。
とても当たり前の事だけど、当たり前のことをきっちりやるというのは意外と難しい。
▼IGDA日本発表
▽「ゲーム業界から見たUX」(小野憲史さん @kono3478)
http://www.slideshare.net/kono3478/ux-14827357
・ゲーム業界不変の法則:
1.ゲームは技術進化に裏打ちされた遊び
2.技術の進化で領域が拡大する
3.領域の拡大でクリエイターが広がる
・ゲーム業界は「KGN=こんなのゲームじゃない」の繰り返しの歴史だった
現在「ソーシャルゲームはゲームか?」が盛り上がっていますが、
極端な形(かつてはサン牧のような育成、今ではカードソーシャル)だけに囚われた議論は
不毛だなあと思っていました。
確かにファミコンが出た時も、アーケード界隈からは「しょぼい子供のオモチャ」
と言われていたということですし、
どんなモノも、出始めは多くの問題を抱えてるもんだと思います。
新しい芽を潰すのではなく、「どうやったらもっと良く・面白く・健全に収益を上げられるようになるのか」
を考えた方が建設的だよね。
・ゲーム業界にとって、UXとはファン=楽しさ として認識されていた。
・ソーシャルゲームがもたらしたゲームの広がり
・ユーザーの拡大(無料ゲーム)
・ファンの変化(課題解決→社会承認)
・ゲームの変容(企画重視→運用重視)
ゲームの変容については、私個人も「職人芸的作品の販売業」から「サービス業」に
急速にシフトしていると感じていて、サービス寄りになりすぎなんじゃないか?と思っています。
KPIによるユーザー動向分析に合わせて改善するのもいいけど、
「俺はコレが面白いと思う!ついて来いよ!」的な熱さを失ってきているんじゃないかと。
まあそのカウンターとしての現状なんでしょうけど。
今後は、この両極のバランスをどうとっていくのか、が重要なポイントになるのだろうと思っています。
▽「ゲーム業界から見たアジャイル開発」(長久勝さん @mnagaku)
http://www.slideshare.net/mnagaku/ss-14819297
・ゲーム開発でアジャイルを選んだ場合の注意点
・「変化を抱擁する」→ただの朝令暮改 になる危険性
・アジャイルは本来、「強すぎる管理を緩めて、自主的な規律で代替しよう」というものだが、
ゲーム業界の場合「弱すぎる管理の引き締め」に使おうとしていて、本来の文脈外
「安易にアジャイルを取り入れてもうまくいかない可能性が高いよ」ということなんですが、
そもそも新しい手法に対しての拒否感というのはまだまだ強い気がします。
アジャイルが銀の弾丸ではないということは早くから指摘されていることで、
重要なのは手法ではなく、「現状がダメなんだったらなんとかしなくちゃいけない」
という原則を忘れないことなのではないかと。
▼DevLOVE発表
▽「学び方を学ぶことを学ぶ」(伊藤宏幸さん @hageyahhoo)
http://www.slideshare.net/ssuser968fab/ss-14807961
・学び方にもパターンがある→「学習パターン」
例)どっぷりつかる→プロトタイピング→「まねぶ」
・「コツ(how)」と「こだわり(what/why)」の違いを意識することが重要
スライドにはありませんが、「守破離」のお話もありました。
(守破離とは:http://www9.ocn.ne.jp/~kihunkan/syu_ha_ri.htm)
何にせよ先人が「こういういい方法があるぜよ」という事はまずちゃんと真似してみること、
それによって自分に合わないところが出るだろうから、
そのカスタマイズを次の段階として行う。
先ほどのアジャイルの導入にもつながるところがありますね。
▽「Lean!!Lean!!Lean!! – 開発現場から愛をこめて -」(及部敬雄さん @TAKAKING22)
http://www.slideshare.net/TakaoOyobe/20121021-leanleanleandev-love
・リーンスタートアップの「MVP」= MinimumVariableProduct(実用最小限の製品)だが、
小さすぎて価値のないものでは意味が無い。
・ドラクエで学ぶ「リーンスタートアップ」
・価値:平和
・ユーザー:人類全員
・何をすれば良いか判らないので手頃なスライムを倒す→最小の価値
・ユーザー中心:村人に話をして次を計測する
・学ぶ:毒消し草
これを回していくのがリーンスタートアップ
リーンスタートアップは気になってますがまだちゃんと追えてないです…。
今回の発表でさらに興味が増したので後でちゃんと追いたいなと。
発表の手法として、ドラクエのように皆の共通体験に根ざした例を用いる、というのはGoodですね。
▽「『Experience Visionのはじめかた』に見るDevLOVE勉強会のススメ」(滝川さん @takigawa401)
http://www.slideshare.net/takigawa401/experience-vision-devlove
・ユーザーの要求に対して直接的な解決を与えるのではなく、ユーザーの本質的要求に響く提案型
例)「朝起きられない→目覚まし」ではなく
「朝起きられない→可愛い子のモーニングコール」の方がイイよね!
ちょっと上記の例についてはピンときませんでした。
私の中の直接的解決と提案型解決というと、ゲームで例えるとこんな感じ。
問題:「敵が固すぎて勝てねえ。クソゲー。」というプレイヤーからの不満
直接的解決:敵の防御パラメータを下げる
提案型解決:
1.実は進行度に対して、敵の強さが上がる率と、プレイヤーの成長速度のバランスが悪かった。
→味方のパラメータが上がりやすいように調整
2.実は弱点をつけばすぐ倒せるのに気づかれてなかった
→弱点であるポイントをプレイヤーに気づかせる仕組みを入れる
つまりは
・直接的解決…「不満だと言われた事に関する場当たり的対応」(マイナス→ゼロにする)
であるのに対し、
・提案型解決…「不満の発生原因を分析し、根本的に解決する、あるいは付加価値を与える」
(マイナス→プラスにする)
という考え方なのではないかと思ってました。
Experience Visionは初耳だったので誤解があるのかも。また気になるものが増えたw
・スケッチング
・コーディングを始める前に、同様の機能を人力でシミュレートし、素早く評価する。
たまに結構ガッツリコーディングして組み込んでから「やっぱダメだったね」となっちゃって、
それを「ゲームはトライ&エラーが当たり前だ!」として正当化してしまうことがままありますが、
できるだけ無駄なトライ&エラーは減らしたいものであります。
人力(ボードゲーム風に紙とコマで試す)や、簡単なシミュレート(Excelの関数とかマクロとか)で
さっとシミュレートして手早く評価するのは有効だと思います。
…が、「作るの面倒~」とか「実装まで時間がない~」とかで見切り発車することも多いんですが…。
↓ともつながる話ですね。
『失敗してもいい方法でとにかく試そう!マイクロビジョン西田竜太氏が提案する
“デジカメプロトタイピング”【CEDEC 2012】』
http://www.famitsu.com/news/201208/23020022.html
・「サポーターの1人が、誰かの手をつないでスタジアムに来てくれれば、観客は倍になる。
両手をつないでくれれば3倍になる。
俺達は誰かを誘いたくなるサッカーを見せなければいけない。」大熊清 前FC東京監督
いい言葉。サポーター(ファン)が増えるようなコンテンツを作って行きたいものですね。
金払いのいい一見さんとかばかり大事にするのでなく…。
■ダイアログ
・いい企画のためのコツ・こだわり
・いい開発のためのコツ・こだわり
について、4~5人のグループでそれぞれ10分で話し合いました。
色々な話が聞けて面白かったですが、やっぱり10分は短いですね。
これ中心の会とかあってもいいんじゃないかと思いました。
1つのテーマ30分くらいで話して、またメンツをシャッフルするとか。
■ビアバッシュ
いわゆる飲み会ですが、発表の会場そのままでやったので、移動の手間が無いのはいいですね!
また立食なので、話すメンツが固定化されにくいのも良かった。
飲食OKで電源まで取れるステキ会場を提供していただいたオラクルさんには大感謝!です。
■全体を通して
今回は第0回だったそうで、お試し開催ということなんですかね?
ゲーム業界は少し前まで非常に閉鎖的で、横のつながりが薄いものでした。
業界内部での交流もまだまだだと思いますが、業界内部だけでなく、
学術方面や隣接業種との関わりも大事だと思います。
ソーシャルの盛り上がりによってWEB業界はかなりオーバーラップしてきてますしね。
学術方面の知見を現場にフィードバックする流れは全然足りてない感じですし。
そういった意味で今回の会は非常に意義深いものだと思います。
ビアバッシュまで含めて1000円という超リーズナブル価格もありがたかった!
ぜひ次回も&定期的に開催していただけると嬉しいです~